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あいつが、秋原伊織が俺を見て悲しそうに顔を歪めるのが、時折見てとれて、そのことに酷く罪悪感を覚えた。
だけどどうしようもないじゃないか。
だってあいつは、俺から大切なものを取っていったんだから、自業自得なのに!
なんでそんな悲しそうな顔するんだよ!
あいつと俺 1-09
俺だって悲しいよ!
伊作は俺の最初の友達だったのに、今じゃ俺には目もくれない!
一緒にいた時間は俺の方が多かったのに、すぐにあいつに追い越されてしまう!
俺だって、俺だって、仲良くしたいって思うのに!
なのに、伊作はあいつが悲しそうな顔してるのには気付いても、俺が悲しい顔してるのには気付かないんだ。
あいつのことならすぐ気付くのに、同じ部屋で同じクラスで隣に座ってる俺の気持ちには、全然気付いてくれないんだ。
ねえ、気付いてよ!
俺だって寂しいんだよ!
ろ組の二人と一緒に走り去った伊作の背中を見ながら、俺はどうしようもなく孤独だと思った。
部屋に戻っても、誰もいなくて。
伊作はさっき走って行ったから、きっとあいつのところだろう。
そのまま夕飯も風呂もあいつらと一緒するんだろうと思うと、なんだか酷く焦った。
胸がかきむしられるような、背中を何かが這い上がってくるような、変な気持ち。
一瞬脳裏にあいつの柔らかな笑顔が浮かんで、すぐに悲しそうな顔をしたあいつが浮かんだ。
ずきって心臓が痛くなった。
苦しくて、胸焼けがする。
罪悪感なんて、途方もないほど抱いているのに、それでもどうしても素直になれなかった。
一緒にいたい。
たったそれだけの言葉を口にすることができなかった。
続
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