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トリップ 1-08

忍者の学校というにはお粗末なほどにけたたましい足音と、それ以上に音を張り上げた勢いよく開かれた障子に、部屋の主とその友人は驚いた顔をして部屋の入口に立つもう一人のこの部屋の主を見上げた。

「いさっくん!長次!作戦会議だ!!」

もう一人の部屋の主こと小平太は、声を張り上げてそう告げた。




作戦会議 1-08




ここのところ伊織の態度がおかしいと感じていた。
何がどうおかしいのかと聞かれたら、上手く答えられないけれど。

例えば朝の挨拶の時に見せる笑顔だとか、いろはの合同実習の一瞬の表情だとか、いつもの四人で遊んでいるときのふとした瞬間だとか、綺麗な青空を仰ぐ横顔だとか。
いろんなところでおかしいと感じるけれど、それでもその一瞬後にはいつもの伊織だから、伊織に質問することもできない。
「どうしたの?」って聞くことを躊躇われる。
だって「何が?」って聞き返されてしまったら、僕は上手く答えることができないから。

だから小平太が珍しくも伊織を置いて僕たちと話をしようとしたときに、気付いた。
きっと伊織のことだ、と。

「伊織が、悲しい顔をするんだ」

部屋に来るなり作戦会議だと声を上げた小平太と三人で輪を作って座り込んだ。
伊織は一人委員会に行っていて、今は傍にいない。
そのことにそわそわしながら、小平太は唐突に告げた。
その言葉に、僕はすんなり理解した。

そうか、あの顔は悲しい顔だったのか。

「七日前に伊織が泣きそうな顔をしてたんだ。だけど私何も聞けなかった。ぎゅって抱きついたまま伊織、泣きそうだったんだ」

すぐに笑ってくれたけど、と言葉を続けた小平太は、だけれどどこか寂しそうな顔をしていて。
きっと伊織もそんな顔で笑ったんだろうと、僕は思った。
だけどそれ以上にずるいと思った。
だって伊織は一番に小平太を頼ったってことでしょう?
・・・それはやっぱりずるいと思う。

「僕も思った。ここのところ、伊織は変だよ」
「・・ああ、確かにそうだな」
「なんとかできないかなぁ?」
「そうだね。伊織には笑っててほしいもんね」
「・・・・・ああ」

ずるいと思うけれど、そんなことより伊織の方が心配だから。
僕たちは考えて考えて、決めたんだ。

伊織が悲しい顔してても、笑ってくれるように一緒にいようって。
伊織が悲しい顔する原因を探すのは、その後でもいいんじゃないかって思ったから。
笑ってくれるようになったら、そしたら原因を探して、そして伊織にもっと笑ってもらうんだ!

作戦会議を終えた僕たちは笑いあって、委員会に行っている伊織を迎えに煙硝倉まで走り去った。
そんな僕たちを見て、悲しそうにしている顔に、僕はその時全く気付いていなかったんだ。







 

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