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忍術学園に入園すると決めてから、私はバイト三昧だった。
とにかくお金を貯めたかったから、どんなバイトも望んで受けた。
前のように呉服屋の店主に布を貰って、小物を作って売ったりもした。
お金は貯まりに貯まって、三年の月日が流れた。
私は無事、忍術学園に入園することが出来た。
人と関わりたくない 03
忍術学園は、温かい場所だった。
優しい先生、優しい生徒たち、笑顔あふれる学び舎。
生ぬるいと感じたのは、私が冷たい人間だからだろうか。
人と必要以上に関わりを持ちたくなかった。
私は疫病神なのだ。
新しい村で、また私は知り合いを亡くした。
その次に寄った村で仲良くなった人も、また亡くした。
その時私はようやく気付いた。
今思えば、私と関わった人はみんな死んでいる。
ああ、私は死神だ。
疫病神ではなく、人間の皮を被った死神だったのだ。
忍術学園に入園するまで、幾度か迷った。
入園するか、しまいか。
入園すれば、それなりに人と関わらなくてはならなくなる。
それではダメだ。
私に関わった人はみんな死んでしまうのだ。
知り合い程度なら大丈夫だが、仲良くなってしまってはもうダメだった。
みんなすぐに死んで逝く。
でも、それでも私は、自分の生への執着を捨てきれなかった。
私と仲良くなった人は死んで逝く。
それなら誰とも仲良くならなければいい。
私は忍術学園に入園した。
「秋原!秋原!!」
私の名を呼ぶのは、同じ一年ろ組の七松小平太だ。
私がどんな態度を取っても、七松は私に近づいてきた。
何がそんなに気に入ったのか、入園当初から七松は私の後をつけて回った。
何処に行くにも一緒だった。
「なー秋原!どこに行くんだ?私も一緒に行くぞ!」
七松が何と言おうが今まで返事したことは一度たりともなかった。
それでも七松は私に笑顔を見せ、時にはしょんぼりしたりと表情をくるくる変えた。
私はそんな七松が嫌いではなかった。
でも、私は七松と関わり合いを持とうなどとは思わなかった。
ちょこちょこと私の後ろを歩く七松。
無表情でその前を歩く私。
そんな私達はすぐに他の生徒の話題となった。
「なー小平太、なんだって秋原なんかの後をつけてるんだ?」
教室の端っこにいる私にも聞きとれるくらいの大きさで七松に話しかける男の子。
名も知らないその子は、私に聞こえているのを知っていながら、七松にそう聞いていることなど知っている。
私は興味もなく、目の前の本に視線を這わせて目線すらそちらにやらなかった。
「なんでって、なんで?」
七松はなんでそんなことを聞かれるのかわからないといった風に、質問を質問で返す。
そんなこと君には関係ないといいたいのか、それともただ純粋に気になったのか。
首をかしげる七松に、その男の子は戸惑い、それでもきっと眉を吊り上げて七松へ返した。
「だって、秋原なんかと一緒にいても面白くもないだろう!?」
それは正論だった。
私だって私みたいな人間となど一緒にいたいとは思わないだろう。
その男の子が言う事は間違ってなどいなかった。
それでも少し、悲しかった。
好きでこんな態度を取っているのではないのに。
でも、これで七松も私を諦める。
それでいいのだ、と自分に言い聞かせた。
「秋原と一緒にいるのは、私が一緒にいたいからだ」
眉に皺をよせて必死に表情に出ないように心掛けていたら、聞こえてきた七松の声。
私と一緒にいるのは、七松が私と一緒にいたから?
じわりと何かが胸の奥に染みた感じがした。
それでも私はそれに蓋をする。
気付かないふり、しらんぷり。
そんなものはなかったのだ。
これでいい、それでいい。
これでいいのだ、俺は。
嬉しいと思ったなんて、そんなこと信じない。
続
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