忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

近寄るな 04

どんなに冷たくあしらっても七松は私に近寄ってきた。
七松が通れないような競合地帯を歩いても、やっぱり七松はめげずに私の後をついて歩いた。
嫌じゃない、そう思う自分が嫌だった。




近寄るな 04




競合地帯は先輩たちの作った罠が所狭しと存在していて、目印が付いていないけれど、なんとなく雰囲気でそこにあるのが分かった。
だから私は普通に避けて通れる。
競合地帯だろうと、そのまま歩いていける。
でも七松は別だ。

最初は自分が競合地帯を歩くことはできないと分かっていたから、私の後ろではなく、私が見える位置から私の後をついて歩いていた七松も、同じ一年生の私が一向に罠にかからないからか、ここに罠はないと勘違いした。
私が罠にかからないのは、それを避けて通っているからで、決して罠が仕掛けられていないわけではなかった。
でも、七松はそれを知らないから。

「秋原!」

私目掛けて走ってきた。
私はとっさに七松の元へ走り寄り、七松を大きく突き飛ばした。
七松と私の間には、少しの空間がある。
そこには先輩の仕掛けた罠がある。
盛大に尻もちをついた七松は、ぽかんと私を見上げていた。
何が起こったのかわからなかったみたいだ。
私に近づくと危険な目にあう。
それを君は知らないから、私の後をつけるのだろう?
もし知ったら、どうなるだろうか。

そんな分かりきったことを。

「・・・私に近寄るな」

私はそれだけ言って踵を返した。
ここまで言えば、七松はもう近寄ってはこない。
いきなり突き飛ばして怒っただろうか。
せっかく話しかけてくれたというのに、冷たい態度をとられて泣いていないだろうか。
尻もちをつかせてしまったけれど、怪我をしていないだろうか。

そう言えば、これが七松と初めて交わした言葉だった。
後ろについてくる気配が感じられなくて、なんだか少し寂しかった。







PR

Copyright © 落乱 : All rights reserved

「落乱」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]