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「兵助は豆腐の食べ方的に、どんな食べ方が好き?」
真剣な目をした伊月先輩に、私は心底呆れてしまった。
6-11
いくら私がある大会で豆腐を持って走ったからと言って、いかにも豆腐好きなんだとそんな安直な考えをしないでいただきたいです。
大体あれだって不測の事態で、私ではなく違う人が引き当てても仕様がないものだったじゃないですが。
借り物競走だなんて、そんなの運ですよ運。
つらつらと先輩を目の前に私は講義をするのだが、先輩の目は私の手元をじっと見ている。
「そういうなら、その手に持っているものは何だ?」
「・・・豆腐です」
そう、今現在、私の手にはふるふる揺れる真っ白な長方形のフォルムが美しい、今さっきまで話題に出ていた豆腐が、皿の上でみずみずしく煌めいていた。
今は昼食時、先輩も私も昼食をいただこうと食堂へ来ていたところだった。
そして先輩は私の手元を見たまま固まり、冒頭の台詞となったわけだったのだ。
「さっき、あんなに否定していたのに・・・!」
「否定していたのではなく、安直に考えを結びつけるのは良くない、と言ったのです!」
誰も豆腐が嫌いだなんて言っていないじゃないですか。
そう呟けば、先輩はどこか納得いかないと言った顔をした。
そんな先輩をほおって、私は静かに席に着く。
その際机に置いた豆腐がまたふるふると揺れたのは言うまでもない。
黙々と目の前の料理を平らげていき、後残り三分の二と言ったところで伊月先輩がまた話しかけてくる。
「で、結局どんな食べ方が好きなわけ?」
「・・またですか?」
「だってさっきは教えてくれなかったじゃないか」
少し拗ねたようにそう言う伊月先輩は、私の一つ上だとは思えないくらいに可愛らしく見える。
利津さんと双子なだけあって、顔の作りは可愛らしいものだから、時折先輩が男だという事を忘れそうになる。
まぁ、言動は男らしいことの方が多いのだけれど。
「で、どうなの?」
「はぁ・・・まぁ一番好きな食べ方は、そのまま醤油をかけるだけなのですけど」
「ふーん」
そっかそっか、と言いながら何やら考えている先輩に少し不安になる。
伊月先輩は普段はすごくいい先輩で、成績もトップクラス、というかむしろトップかその次くらいのレベルで、しかも後輩に優しいからみんなに好かれるたちなのだ。
だけどそんな先輩にも欠点はあって、私と同級の鉢屋三郎並みに悪戯が大好きなのだった。
だから、私の目の前でにこにこと素晴らしい笑顔を披露している先輩に、一抹の不安が過ぎるのだ。
「よし!大豆だな!」
「は?」
お前のあだ名だ
(これから兵助を大豆と呼んでやろう!)(いやーいいこと思いついたものだ)
(ちょっと待って下さい先輩!)(なんでそうなるんですか!?)
(だって豆腐だけってのが好きなんだろう?)(原材料は大豆じゃないか!)
(・・・葱を乗せるのも好きです)
(じゃあ葱、だな)
(なんでですか!!)
続
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