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小平太に抱きついて縋ることしかできない自分が、酷く惨めだった。
それは依存という名の 1-07
あの子と会った後、気付いたら小平太に縋りついていた。
自室で小平太と二人でぎゅっと抱き合って、小平太は私の行動に疑問を持っていたみたいだけれど、何も聞かずにただ頭を撫ぜてくれた。
一定のリズムで撫ぜられる頭が、手が、温度が酷く心地よくて、私はどうしようもなく安堵してしまっていた。
「小平太」
「うん」
「私・・・」
「うん」
「・・・・・・・小平太ぁ」
「私はここにいるよ」
「・・うん」
私の言葉の一つ一つに頷いて言葉を返してくれる。
そんな些細なことすら、とても幸せなことだと思うし、心の底から安心した。
小平太はここにいる、だから大丈夫。
きっと小平太は私に何があったのか分かってはいないだろう。
けれど私の態度を見て何か察してくれたのか、何も言わなくなった私の身体を先ほどよりも強く抱きしめてくれた。
痛いくらい、抱きしめてくれた。
ああ、私には小平太がいる。
小平太はここにいて、私を抱きしめてくれる。
私の傍にいて、縋る私を嫌がるでもなく、ただ黙って受け入れてくれる。
・・・私はもう小平太から、離れられないかもしれない。
それが酷い独占欲で、唯の依存だと私はきちんと理解していた。
だけれど、それでも小平太を離したくないと思ってしまう。
それが将来小平太にとっても自分にとっても、きっと良くはないのだろうと、頭の冷静な部分では分かっていた。
ああ、だけれどお願いだから、今だけ甘えさせて。
もうすぐ、もう少ししたらいつもの私に戻るから。
もう少しだけこの温かな温度で安心させて。
「小平太、ありがとう・・・・大好き」
「私も伊織が大好きだぞ!」
言いながらぎゅうっと抱きしめてくれる小平太に、顔をあげて私は今できる精一杯の笑顔を見せた。
続
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