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お前のことは嫌いじゃないよ。
でも好きにもなれないんだ。
誰もいない部屋 06
土まみれになった私達はご飯を食べる前にお風呂に入った。
今まで一緒に入ったことはなかったから、なんだか新鮮に感じた。
七松は終始はしゃいでいて、嬉しそうに笑顔を見せてくれていた。
晩御飯も食べ終わり、そろそろ寝ようと思った。
七松に別れを告げ、部屋へと向かおうと踵を返した瞬間だった。
手首を取られ足を止める。
七松が私の手首を持って、私をじっと見ていた。
「何?」
「・・・」
「七松、手を離して」
「嫌だ」
「七松」
「や、」
「・・・」
「・・・」
何も答えない七松に手を離せと言っても嫌だという。
少し語気を強めて名を呼んでも嫌だと姿勢を変えない。
どうすればいいんだ、とため息をつくと、面白いくらいに七松の身体がびくっと跳ねた。
「秋原は、」
「私が、何」
「秋原は私が嫌い?」
「・・・」
「私が嫌いなの?」
「・・嫌いでは、ないよ」
「じゃあ、どうして?」
何が、なんて聞けない。
聞かなくても分かっていることだから。
泣きそうな顔をして、七松がこちらを見ている。
それでも私は二の句が告げない。
どう言えば七松は納得する?
私は死神なのだと、私に関わると死ぬのだと。
「ねぇ、どうして?」
私はもう一度ため息をついて、七松がつかんでいる手をそのままに、部屋へと向かって歩いた。
七松も大人しく私についてくる。
私はこれから話すことを考え、胸が苦しくなった。
「座って」
私は人数の都合で一人部屋だから、誰もそこにはいない。
今まで自分以外いたことのない部屋に七松がいるのが、少しおかしかった。
七松の向かいに座って、これから話すことを頭の中に巡らせる。
言ってしまえばもう終わりだ。
七松はもう二度と私に近寄ったりしない。
他のみんなも。
辛くない、大丈夫だ、痛くない、恐くない。
私は意を決して話し始める。
暗い暗い過去のお話。
続
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