[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
私はとある村の村民の息子だった。
両親は二人とも私の世話をするような人間ではなく、飲んだくれては賭けごとをした。
そんな両親を私は好きではなかったし、彼らも私を好いてなどいなかっただろう。
そんな彼らも私が六歳の時、死んだ。
呆気ないものだった。
過去のお話 07
幸いにも私は生き延びた。
両親の残したわずかばかりの調度品を銭に変え、村を転々として生きてきた。
バイトをしてお金を貯めて、ある村では一年居すわった。
その村も今は戦に巻き込まれて跡形もなく消えてしまった。
戦は酷いものだったよ。
どこもかしこも見知った顔ばかりが倒れていた。
みんな苦しそうに死んで逝った。
それでも、また私は生き延びた。
そこの人々は優しかったから悲しかった。
でも生きたかったから、私はまた村を転々とした。
次の村でもバイトをした。
呉服屋の布で小物を作ったりもした。
呉服屋の店主はいい人で、すぐに仲良くなった。
でもその店主もまたすぐに亡くなった。
今度は強盗だった。
仕事をなくした私はまた次の村へ歩いた。
そこでも仕事を見つけて、それでも仲良くなった人はまた死んだ。
次は山賊だった。
私が仲良くなった人はみんなみんな死んで逝く。
分かるか?
私と関わりを持つと、お前も死ぬんだ。
七松は泣いていた。
そんなに私の話したことが恐かったのか、それとも死にたくないと思ったか。
当然だ。
私だって死にたくない。
あんなことがあっても、それでも死にたくなどなかった。
「分かっただろう?私は死神だ。死にたくなかったら私には近寄らないことだな」
「・・・」
「さぁ、もういいだろう?出て行ってくれ」
「秋原」
「出て行け」
「秋原!」
「出て行ってくれ!」
苦しい、苦しい。
苦しいんだ、七松。
早く出て行ってくれ、そうしないと私は縋ってしまいそうだ。
必死に我慢しているんだ。
温かい何かに縋ってしまいそうになる自分を。
お願いだ、早く私の前から消えてくれ。
ぎゅっ
「っ七松!離せ!」
「嫌だ!」
「な」
「伊織、伊織、伊織」
「な、なまつ?」
「伊織、悲しかった?苦しかった?痛かった?」
恐かった?
そうだ、私は恐かった。
私に関わるとまた死んでしまう。
私と仲良くなるとまた死んでしまう。
みんなみんな死んで逝ってしまう。
また私は大事なものを亡くしてしまう。
恐かった。
「っ」
「いいよ、泣いて。私は死なないから。大丈夫だから」
「っそ、んなの、分からないじゃないか!」
「死なないよ、私は死なない」
「だって!今までみんな、死んで・・・」
「私は死なない、ずっと伊織の傍にいる」
傍にいる。
我慢などできるはずもない。
必死にこらえてきたものが、すべてその言葉で流されてしまった。
私を抱きしめる七松の温かさが、私の求めていたものだった。
ぎゅうっと抱きしめ返して、私はその熱に縋って泣いた。
あふれる涙は止まらなかった。
続
≪ 新しい世界 08 | | HOME | | 誰もいない部屋 06 ≫ |