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6-03
「はっ!」
ザザッ
森の中を木をつたって走りぬける。
ところどころに仕掛けられた罠をくぐり抜け、早く早く走りぬける。
それはまるで風の様に。
「やはり伊月には敵わないな」
「はは、どーも」
「何故お前がろ組なのか、いまだ納得できん」
立花仙蔵はそう言って、腕組をしていた腕を解いた。
眉間に若干の皺が寄っているから、本当に不可解なのだろう。
なんてことはない。
私は筆記をまともに受けないから、だ。
必死こかなくてもそこそこ取れてしまう筆記の試験の点数のために、利津との時間を減らすくらいなら、成績なんぞ良くなくともいいという何とも大雑把な理由故に、伊月は毎年ろ組なのだった。
今、六年全体での実習訓練中。
ある城へ巻物を送る者と、その巻物を奪う者とに分かれての実習だ。
二人一組の班で構成されるが、その班は先生によるくじ引きだ。
今回、立花仙蔵と八木原伊月は同じ班になっていた。
そして、伊月達は巻物を奪う者だった。
実習が始まって早々に出くわした、潮江文次郎と七松小平太とのタッグからいとも簡単に巻物を奪い、今はそれの追跡を捲いているところだった。
汗もかいていないし、息も乱れていない伊月に対し、仙蔵は息は乱れていないもの、やや汗をかいていた。
仙蔵が体力がないわけではなく、ただ単に伊月の体力が化け物並みだと言うに他ならない。
「さーて、実習終了まであと、どれくらいだ?」
「そうだな・・・あと二刻くらいか」
「もうそんなに経つのか?あと二刻ならあっという間だな」
「そうだな」
自分も仙蔵もまだまだ体力がある。
その上忍具も全くと言っていいほど使っていないから、ほぼ実習の始まったときと変わらない状態を保っていた。
比べて文次郎と小平太は苦無を数本と宝録火矢を二つばかり使っていた。
それに逃げる私たちに比べ、追う側はそれ以上の体力を使うのだから、そこそこに疲れているだろう。
今から私たちから巻物を奪い返したとしても、城まで届けられるかは五分五分と言ったところか。
「さーて、最後まで頑張りますか」
「・・ふふ、文次郎に一発ぶちかましてやろうか」
「仙蔵、いい笑顔」
にやりと笑って、後ろを振り返る。
さて、勝負勝負!
御ふざけだけじゃないんです
(小平太!ぶっころーす!!)(え!ちょ、本気ださないでよ!)(本当に殺したりしないよ?半殺しだ)
(仙蔵、バカタレ!至近距離で宝録火矢を使うんじゃない!!)(私には当たらない、だから)
((安心しろ))((安心できるか!!))
続
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