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転生 6-06

「伊月、お主にお使いを申し渡す」
「・・・お使い、ですか」
「うむ、これじゃ。この巻物をある城まで届けてほしい」
「承知いたしました。ではすぐにでも向かいます」
「・・・よろしく頼むの」
「はっ」




6-06




食堂でおばちゃんと一緒に昼食の手伝いをしていたら、違和感があった。
でも昼食の忙しさから、そんな違和感すぐに吹っ飛んでしまっていた。
それに気付いたのは、もっとずっと後のこと。

「利津ー!」
「あ、小平太」
「利津!伊月知らないか!?」
「え?伊月?」

そう言えば朝食の後、伊月を見ていない。
いつも食事時は何か用事がない限り、必ず一番乗りをしていたのに、今日はそれがないどころか昼食を食べにすら来なかった。
・・・おかしい。

普通なら一食抜いたくらいおかしくもなんともないけれど、伊月に限っては、とてつもなくおかしなことだった。
伊月がこれまでの六年間で食事をおろそかにしたことはほとんどない。
過去数回あったが、それはすべて実習があったりしたくらいで、それ以外では何があっても必ず食堂に来ていたのに。

何かあったのだろうか。

「小平太、伊月はいつからいないの?」
「んー、私はバレーに誘おうと思って探して出して、だいたい一刻くらいかなー」
「・・・それは」

尋常じゃないな。
小平太が探し出して一刻も経っているのに、伊月が見つからない。
ということは、伊月が意図的に小平太に見つからないようにしているか、はたまた学園内にいないか。
そのどちらかしか考えられないが・・・昼食を食べにこなかったこともあるし、きっと後者だろう。
では、自分になんの報告もなしに伊月が一人学外に出るかと言われると、それもあり得ない話だった。
何があっても必ず誰かに託を頼むか、自分で報告をしてくる伊月だからこそ言えることだが。

伊月が学園内にいない。
それも自分に内緒で。

「伊月、どこ行ったんだろ?」
「そうだなー、んー・・・忍務かなー?」
「忍務?」
「たまに学園長からお使いを頼まれることがあるからさ」
「・・・それかもね」
「ん!まぁそのうち帰ってくるか」
「そうだね」

じゃあな、と言って去っていく小平太を見ながら、私は不安が拭えない。
伊月はいつも無理をするから。
怪我でもして帰ってきたら、すっごく沢山怒ってやらなきゃな!

拭いきれない不安を気力で押しやりながら、私は食器の片付けに取り掛かった。



拭いきれない不安を持って
(伊月は絶対大丈夫)
(だって私の兄だもの!)
(でも、怪我でもしようものならかすり傷でも許さないんだから!)





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