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息が上がる、頭がくらくらする。
それでも足を止めるわけにはいかなかった。
6-08
あの後、案の定襲ってきたプロ忍は三人までは倒せたのだが、残りの一人が自分よりも上手だった。
三人目を仕留めた瞬間の隙を突かれて、わき腹と足に怪我を負った。
このまま戦えば負ける。
瞬時に判断して、なんとか逃げ出し、巻物を届けることだけに意識を費やした。
走れ走れ走れ走れ!
はっ はっ はっ
痛む足を誤魔化しながら、全速力で木々の上を走り抜ける。
竹谷から動物の扱いを習っていて良かった。
指笛で呼び出した狼たちに、先ほどの男を一時任せ、今はただ全力で走り抜ける。
それでもきっと、一時の足止めにしかならないだろうが。
城まであとどれくらいだろう。
あと何刻走ればよいだろうか。
ああ、足に限界が来そうだ。
一度足を止めたらば、もう動きだせそうにない。
この身体朽ちるまでは、走り通さなければ。
ぱちりと目を覚ますと、見慣れない天井。
あれ?と首をかしげながら、寝かせられていた上体を起こした。
ズキンと鈍い痛みが体中を駆け巡る。
「っ」
いったー・・・右足と脇腹。
ああ、あの時の傷か。
状況が理解できない。
情報が足りない。
見回せば上品で高級な調度品の置かれた広い部屋に私は寝ていた。
布団も真っ白でとても肌触りがいい。
そうとうなお金持ちだな。
襖の向こうは庭だろうか?
まだ少し明るいが、今は夕方だろうか、朝方だろうか。
・・・・・・
「あっ!」
密書!!
懐を漁ろうとして、自分が今着ているものが出かけたときと違うのにようやく気付く。
真っ白な寝間着を着こんだ自分。
どういう事だ?
「目覚めましたか」
「っ!誰だ!」
目の前に突然現れた老人に、全身が警戒態勢に入る。
全く気配が分からなかった。
「ほほっ 安心なされ。ここはササクレヒトヨタケ城の客間じゃ」
「ササクレヒトヨタケ・・・それでは、私は」
「昨晩、満身創痍のお主が門前に走り込んで来たとわしに連絡が入った。駆け付けてみると忍術学園からの使いだとお主が言うので城主にお目通りしましたわい。そのあと気絶してしもうたから、ここに寝かせておいたのじゃ。勝手に着物を着換えさせてしまい申し訳ない」
「いえ!そんな、ご迷惑をおかけしました。ありがとうございます。・・・それでは私は無事に巻物をお渡し出来たのですね?」
「さようじゃ。しかと城主に渡りましたわい」
「・・よかった」
ほっと息をついた。
正直な話、全く記憶に残っていないから、敵を倒したのかどうかさえ判断が難しかったのだ。
知らないうちに忍務をこなせていたのか、本当に良かった。
私は再度老人に向き合って、深く頭を下げた。
「本当にご迷惑をおかけしました。ありがとうございます。さっそくで申し訳ないのですが、私はこれで失礼したく思います。その前に城主殿に再度お目通りさせていただきたいのですが」
「ふむ、よかろうて。すぐに話を通してきましょう」
そう言ったまま老人は音もなく目の前から消えさった。
やはり、すご腕の忍者であろう。
・・・・こんなに凄い忍者がおかかえでいるのなら、忍術学園まで取りにくればよかろうに、なんて思ってはいない。決して。
再度城主とお目通りし、そのままササクレヒトヨタケ城を後にする。
結局のところ、だいぶ時間をロスしてしまったから、このままでは明日の朝までに帰りつけるかどうか、と言ったところだな。
ああ、利津が恋しい。
間違った、利津のご飯が恋しい。
あながち間違いではないのだが
(さーて、帰りますか)
(あ、そう言えば利津にも誰にも何にも言わずに出てきちゃってたなー)
(・・・ま、いいか)
続
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